福祉のこころ 地域医療・包括ケアの現場から(43)local_offer福祉のこころ
社会福祉士・精神保健福祉士 末吉重人
障がい者福祉について (7)
発達障がい(下)
自閉スペクトラム症
先回、自閉スペクトラム症はコミュニケーションの障がいがあると書きました、なぜそうしたことが生じるのでしょう。それは、コミュニケーションの際の「場の空気」が読みづらい、コミュニケーションする「相手の気持ち」が想像しづらいからにほかなりません。そうなると、会話は噛み合わないことになります。
なぜそうなるのかはよくわかっていません。相手との共感力を生み出す神経伝達物質オキシトシンが生まれつき、少ないのではないかとの説もあり、オキシトシンを投与して状況を改善する試みも行われています。
身体症状とこだわり
コミュニケーションがギクシャクする本人にとっても、そうした状況は苦しいものがあります。その苦痛が身体症状としてあらわれることもあります。その辺りは、当事者が書いた『発達障害の私の頭の中は忙しいけどなんだか楽しい』(ぶどう社・2020年)を読むと理解して頂けるものと思います。
また強い「こだわり」を持つこともあります。それは時に「非」発達障がい者には奇異に映ることもあります。反面、一度こだわったことには長い間執着出来ますので、その筋の専門家になることがあります。魚が「こだわり」であると魚博士になれます。
二次被害とは
しかし、周囲に発達障がいへの善き理解者が現れない場合、二次被害が生じることになります。コミュニケーション障がいから、仲間に入れてもらえない、相手にされないなどの状況下に長く置かれると、対人恐怖やうつが生じるかもしれません。引きこもることもあるでしょう。
大切なことは善き理解者を得ることです。それは親かもしれません。あるいは伴侶になるかもしれませんが、彼らが通訳者となることで発達障がい者の社会適応は十分可能です。
学習障害
特定の科目が苦手とは、たとえば他の教科が出来るのに漢字だけが覚えられないとか、数学だけが突出して劣っているなどの状態です。これがもし知的障がいだと全教科の成績が低いことになりますので、違いは分かりやすいと思います。
筆者の生徒にも、試験の解答用紙の漢字が、見事に平仮名となったことがありました。LD児・者用の漢字ドリルが最近では開発されていますので、その紹介をしたいと学校を通じて打診したのですが、本人は頑として自分がLDである可能性を受け入れませんでした。長年の苦手を克服するチャンスでしたが、まことに残念な結果に終わりました。
終わりに
繰り返しになりますが、発達障がい児・者への支援は、本人の強みを強めてもらうストレングスの視点が重要です。しかしその際でも、苦手な部分を本人や周囲の支援者が理解しておくことは大切だと思います。